おとなのジャズとおとなのオーディオ

東北の南にA市という街がある。 その街に老舗のO電気店がある。 これは、その店でオーディオの販売をしている男のつぶやきとささやきとひとり言である。
写真・・・・・左

CDと違って、30pLPのジャケットは迫力があります。カーリー・サイモン「トーチ」、ジャケット買いだ。でも中身もいい。

写真・・・・・右

アナログプレーヤーで、今でもこのようにして楽しんでいる方たちが多い。

VOL.47

アナログオーディオは、おとなのロマン

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みなさんお変わりありませんか。今年になってからこの会津の平野部ではそれほど雪が降らず、「雪かき」という肉体労働を、あまりやらずに済んでいます。

先日は真冬の猪苗代湖に行ってきました。ここは毎年、白鳥がいっぱい来るところですが、白鳥を見に行ったんじゃなく、「しぶき氷」を見に行ってきました。

湖の東側の浜辺に打ち寄せられた湖面の水が、寒さで岸辺にある樹木に凍りつき異様な姿になるんです。強い西風が吹くとその形はますます巨大になります。大きくなったその姿はまるでモンスターです。この姿を通称「しぶき氷」といっています。

そのつど形が変わってあるときはいろいろな動物の姿に見えたりして、けっこうとおもしろいところがあります。湖水浴場の駐車場から、1時間近く雪の中を歩かなければなりません。吹雪いているときは危険もともなうので行かないほうが無難です。この日は風もなく穏やかだったので助かりました。

  今日は、おとなのジャズとおとなのオーディオ、初めてのアナログ・オーディオのお話です。

ジュリー・ロンドン/アラウンド・ミッドナイト

私の名はジュリー/1950年代、魅力的なハスキー・ボイスで一世を風びした人気歌手。

 

音楽を楽しむのは、コンサートを聴きにいく、自分で演奏をする、自分で歌う、CDやアナログレコードなどパッケージソフトを買って楽しんだりと、さまざまです。

知人のT.I氏はアナログ・オーディオに情熱を燃やしています。中年になりかかった頃です。ジュリー・ロンドン命というぐらい、気持ちは青春の方です。この頃女性に流行ったのが、左の写真にあるような、ジュリー・ロンドンのはいているサブリナ・パンツです。そういえばオードリー・ヘップバーンの「麗しのサブリナ」という映画が当時あって、彼女もすごく素敵だったなあ。

このT.I氏は、アナログ・レコードが大好きなんですが、普通のLPじゃなくって、1950〜1960年代の輸入ジャズLPといわれるアナログレコードを楽しんでいます(左の写真のジャケット)

今となっては、これらのLPは、中古LPの専門店でしか手に入りません。都内においてはまだけっこうとこれらLPを売っている店はあるんですね。ということはやはり、需要があるんですね。ただ、価格は国内の普通のLPが3000円からまりですが、これらのものは、需要と供給との兼ね合い、盤の程度(ジャケットの状態、傷、ノイズ等)によりますが、3〜10倍程度はするようです。

どうしてそこまでして手に入れ楽しみたいのか、といいますと、その音質にあるようです。決して過去礼賛依存症ではないようです。やはりここにもこだわりの世界があったのです。

             左はそのLPのレーベルです。


DENON  DL-102

 

ヘッドシェルに取り付けた状態

 


フォノイコライザーアンプ LUXMAN  E-06α

 


アナログプレーヤー

 

果たして、その音質とは? 

今回は、T.I氏に我が家にお越いただいて聴かせていただきました。用意しましたのは、まず、カートリッジです。当時のLPはモノラルレコードです。カートリッジもモノラル使用のDENON DL-102です。

信号が1チャンネルですから、カートリッジのピンもプラスとマイナスの2本だけです。これをプレーヤーのアームの受け口は、4本のピンですので2本づつ、プラスとマイナスの信号を分配してやります。

ここから、フォノ・イコライザーアンプに接続して、昇圧(出力電圧をアップする)して、プリアンプへと信号が流れていくわけです。CDと違ってアンプに信号がいくまでに何段階かのステップがあります。

通常のLPもそうですが、この、一見複雑なステップにかかわる機器によっても音質が変わっていくわけです。要因としまして、カートリッジの種類、アームのつくり、アナログプレーヤー本体、昇圧トランスやフォノイコライザーアンプ、それぞれを接続するオーディオ・ケーブル等があります。

1950年代の人気ボーカリスト、ジュリー・ロンドンの人気アルバムを聴いてみました。CDをはるかに凌駕する、圧倒的な音量と音圧が左右のスピーカーから出てきました。誤解しないでください。CDより物理的に音量や音圧が上がっているわけではありません。

ボーカル帯域の情報量が全然違うんです。歌っているときの,肉声が、表情が伝わってくるようです。「ラウンド・ミッド・ナイト」なんかは、ささやくような、せつなさの声が目の前で歌っているかのような実在感さえあります。ゴージャスなひとときです。太いサウンドの中に、声に芯があって艶と色気がでてきます。

自分で持っているCDの同じアルバムでは絶対に体感できません。くらべると、音の線が細く、どこかBGMみたいになっているからです。18番の「クライ・ミー・ア・リバー」、ハスキーな声でナウ・ユアー・セイ・ユアー・ロンリーと歌い始まると部屋の中はジャージーなムードにつつまれます

これが、知人がこだわっているところか、このアナログ・レコードのサウンドを聴くとなるほどと思ってしまいます。聴かせていただいたレコードはノイズも少なく感動モンでした。このような体験をすると同じ世界にはまってしまいそうになる。あぶない!

10枚ほど持ってきていただいたんで、次々と聴かせていただいたわけです。すべてが脱帽モンではありませんが、声に艶があり圧倒的な声量感は同じです。CDを否定するわけではありませんが、あらためて、現在では消滅している過去の遺産にも本物があることを知らしめられ感動した次第です。

この輸入アナログレコードを現在のオーディ機器で聴くとすべてがよく聴こえるかというと、そうではないみたいです。片鱗は再生できるはずですが、スピーカーによってガラッと変わってしまいます。私の部屋のスピーカーは往年のJBLはオリンパスS8Rです。知人の彼は、自作でやはり2インチのホーンを搭載した38p2ウェイのスピーカーで楽しんでいます。

スピーカーの共通点はホーンユニットを使用していることです。レコードが製作された当時もたぶんこのようなホーンユニットをつけた出力音圧レベルの高いスピーカーでモニターしながら作ったと思われます。こういったことって意外にベスト・マッチする場合が多いんです。

このようなアナログレコードを彼(T.I氏)は、地元では手に入らないために、東京に行った際に、レコードを取り扱っているお店をまわっては少しづつ増やしているそうです。この労力と、かかる費用は並大抵ではありません。これには脱帽モンです。

(左)1950年代初めの女性ボーカリスト、リー・ワイリーの「ナイト・イン・マンハッタン」。3枚の比較写真です。上が国内盤、真中がオリジナル盤(ジャケットの印刷の具合も変わる)、下はもちろんCDです。撮り方がわるく良くわからないですね。それぞれを比較試聴して楽しみました。

下の写真のアルバムは私のコレクションの一部です。マイルスとバーバラ・リーはオリジナル盤は買えませんので、もちろん25cmの復刻盤です。影が薄くなってしまいました。

 

(左の写真) T.I氏のコレクションから「ミーツ・ザ・リズム・セクション」。上が国内盤で、下がオリジナル輸入盤です。

(下の写真) 聴かせていただいた一部のアルバムです。デジカメで撮ったんですが、CDの写真ではありません、というのをわかっていただくためにわざとテーブルにおいて撮影しました。反射があり少々見にくくなっています。すみません。ジュリー・ロンドン、クリス・コナーのアルバムです。

 

もう一つのアナログ・オーディオ・・・・・ラッカー盤を聴く



ラッカー盤をプレーヤーにセット

プレーヤーを横から見たところ。ターンテーブルは30p。

audio-technica
AT-33PTG

 

CD ブルースエット・パートU

 

左の写真は、ラッカー盤がプレーヤーに載っている写真です。アナログレコードは、マスターテープから、一旦、このラッカー盤をつくり更に、実際のレコードをプレスするためにスタンパーといってラッカー盤から型をとったものでプレスして出来上がります。

直径が35pあり、左の写真の通り30pのターンテーブルからは大きくはみ出してしまいます。音を刻んであるのがLPと同じですので何とか、かけることが出来ます。やわらかいので爪でも傷がつくぐらいです。何回もかけるとノイズが多くなってしまいます。

CDの場合も同じですが、何段回もの製造工程を経ると音質はだんだん悪くなっていくんですね。われわれは商品として発売されたものを聴くしかないんでやむをえないものがあります。

それにしてもこのラッカー盤から出てくる音はすばらしいものがあります。アナログレコードの説明のために、ラッカー盤のデモンストレーション用としてつくられたものです。

片面には、1993年に再結成して吹き込まれたカーチス・フラー・クィンテットによるアルバム、「ブルースエット・パートU」から「ファイブ・スポット・アフター・ダーク’93」が、もう片面には美空ひばりの「港町13番地」が、45回転のスピードで入っています。

「ファイブ・スポット・アフター・ダーク’93」はステレオ録音です。カートリッジをオーディオ・テクニカのAT-33PTGにセットして聴いてみました。はっきりとしたメーカーかは、わかりませんが、たぶん、ノイマンあたりの真空管アンプ・マイクをつかっての,オンマイクでのテープによるアナログ録音です。ベースは、まるでハウリングでも起こしているような音が出てくる。普通、ベースはブンブンと軽い音なんだが、チョっと出すぎだがオーディオ的にはおもしろい。

始めのバースのトミー・フラナガンのピアノを聴くと、つやのあるピアノで、アナログ録音特有のウォームな音が聞けます。そして、やや左がカーチス・フラーのトロンボーンとやや右のベニー・ゴルソンのテナーサックスのユニゾンでは、やはり、つやのある、ふわっとしたやわらかいサウンドの雰囲気が良く出て、それが、圧倒的なホーンの厚みと迫力を持って再生します。

更に、ゴンゴンと、ものすごい重厚なベースの低音が入っています。スピーカーを30p床から上げているんですがそれでも床全体がブルブルと響きます。プロデューサーや録音・エンジニアの方が意図してそうした音をねらったと思われます。

同じのがCDであるんで比較してみました。音色が冷たいですね。すっきりはしてるんですが、音の厚み、音圧感でCDが負けてますね。我が家のCDの音がだめなのかな、なんて悲しくなってしまいます。いや、これは、ラッカー盤の音が膨らんであまいんだ、45回転だから良く聴こえるんだ、ラッカー盤というのが特殊なんだ、そういって、負け惜しみを自分に言い聞かせています。

1959年のアルバムが現代に甦えるとこうなる、と、こんな感じです。これぞ、ジャズ・オーディオだ。

いやあ、ジャズとオーディオ、いろいろな楽しみ方があって本当におもしろいですね。

2003.3
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